社会派ミステリー小説
─ 滋賀県大津市の場合 ─
8万人が見ていた。
でも、誰も彼女を知らなかった。
「見る」ことは、暴力になりうるのか。
琵琶湖のほとり、滋賀県大津市・膳所。主婦・野村多惠子は、毎朝この静かな湖畔を散歩するのが日課だった。
ある朝、近所に住む杉本沙織と踏切ですれ違う。無口で、人付き合いを避ける女性。誰もが「何か隠している」と噂していた。
その日の夜、沙織は自宅で殺された。
やがて多惠子は知る。沙織が登録者8万人を超えるYouTuberだったことを。そして、自分たちが知らぬ間にその動画に映り込み、「ベンチの女王たち」と呼ばれていたことを──。
カメラの向こう側で、何が起きていたのか。コメント欄に残された憎悪の言葉。無断で撮影され続けた人々の怒り。そして、沙織自身が抱えていた深い孤独。
「見る」と「見られる」の境界で揺れる人々を描く、SNS時代の社会派ミステリー。