社会派ミステリー小説

YouTuber殺人事件

─ 滋賀県大津市の場合 ─

8万人が見ていた。
でも、誰も彼女を知らなかった。

「見る」ことは、暴力になりうるのか。

あらすじ

琵琶湖のほとり、滋賀県大津市・膳所。主婦・野村多惠子は、毎朝この静かな湖畔を散歩するのが日課だった。

ある朝、近所に住む杉本沙織と踏切ですれ違う。無口で、人付き合いを避ける女性。誰もが「何か隠している」と噂していた。

その日の夜、沙織は自宅で殺された。

やがて多惠子は知る。沙織が登録者8万人を超えるYouTuberだったことを。そして、自分たちが知らぬ間にその動画に映り込み、「ベンチの女王たち」と呼ばれていたことを──。

カメラの向こう側で、何が起きていたのか。コメント欄に残された憎悪の言葉。無断で撮影され続けた人々の怒り。そして、沙織自身が抱えていた深い孤独。

「見る」と「見られる」の境界で揺れる人々を描く、SNS時代の社会派ミステリー。

琵琶湖 YouTube 無断撮影 SNS時代の孤独 社会派ミステリー

著者より

私は現在、神奈川県小田原市に住んでいる。六十五歳になった。

先日、膳所小学校の同窓会があり、久しぶりに故郷の地を踏んだ。翌日、時間に余裕があったので、一人で湖岸沿いを歩いてみた。

膳所公園──本作では「膳所城跡公園」と書いたが、地元民としてはやはり「膳所公園」のほうがしっくりくる。中庄は「なかしょう」と読むのが正しいらしいが、私たちは「なかのしょう」と呼んでいた。御殿浜も、大津市のホームページによれば「ごてんはま」が正式な読みだそうだが、私の耳には「ごてんがはま」のほうが馴染み深い。

五十年以上前に歩いた道を、老いた足でたどる。変わったもの、変わらないもの。琵琶湖の水面は相変わらず静かに光り、対岸の山並みは記憶のままそこにあった。

そんな懐かしい景色を眺めながら、ふと空想が浮かんだ。この穏やかな街並みで、もしただならぬ事件が起きたら──。

子供のころに駆け回った路地、毎日のように遊んだ公園、見慣れた踏切。その風景の中に、現代の「見る」「見られる」をめぐる物語を重ねてみた。

本作に登場する人物、施設、団体等はすべてフィクションであり、実在のものとは一切関係ありません。故郷の風景を借りて紡いだ、一編の妄想をお楽しみいただければ幸いです。

── 著者

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